金属部品の脱脂洗浄でトリクロロエチレンが使われ続けているのは、切削油やワックスを落とす力が強く、燃えにくく、乾きが速いからです。水系の洗浄に替えると落ちきらない汚れが残る、という現場も少なくありません。

洗浄そのものは装置の中で終わりますが、部品の出し入れと乾燥待ちは装置の外で行います。トリクロロエチレンの蒸気は空気の4.5倍の重さがあるため、立ちのぼらずに足元へ下りていきます。

ここでは、ダクト工事を伴わずに、洗浄機のそばで蒸気を除去する方法を整理します。

トリクロロエチレンの発がん性と、足元に溜まる蒸気

トリクロロエチレンは発がん性が区分1Aに分類されています。繰り返しばく露した場合の影響としては、中枢神経系と肝臓への障害が挙げられています。

管理濃度は10ppm、日本産業衛生学会の許容濃度は25ppmです。特定化学物質の第2類物質であり、特別管理物質にあたるため、作業の記録は30年間保存することになります。

蒸気の重さは空気の4.53倍あります。床へ下りてピットや機械の陰に溜まるので、天井の換気扇を回していても足元の空気は入れ替わりません。沸点は87.2℃で、加熱して蒸気にして使う工程そのものが発生源になります。

燃えにくい溶剤ですが、温まった面や炎に触れると分解して、ホスゲンと塩化水素を生じます。水分のあるところでは光によっても少しずつ分解し、腐食性の塩酸ができます。

【工程別】トリクロロエチレン対策の現状と課題

脱脂洗浄の現場で聞こえてくるのは、洗浄機そのものではなく、その前後で人が立っている時間の話です。

  • 「洗浄機のフタを開ける数秒で、足元に蒸気が流れ出る」(金属部品の脱脂洗浄)
  • 「乾燥待ちの部品を並べている間、ずっとその横に立っている」(切削加工後の洗浄)
  • 「洗浄機の位置は動かせないので、フードを足そうにも経路がない」(表面処理の受託加工)
  • 「同じフロアで溶接もするため、流れていく蒸気が気になる」(板金加工)

いずれも、洗浄機の性能ではなく、人が手を動かす位置に原因があります。

フタを開ける数秒に出る蒸気

蒸気洗浄は、トリクロロエチレンを沸点まで温めて蒸気にし、冷えた部品の表面で結露させて油を落とします。蒸気を立てていることが洗浄の条件なので、運転中は槽の中が蒸気で満たされています。

部品を入れるとき、取り出すときに開口部が開きます。この数秒のあいだに蒸気が出て、作業者の足元へ下りていきます。1回あたりは短くても、1日の処理数だけ繰り返されます。

床に下りた蒸気は天井の換気扇では動かない

空気の4.53倍という重さは、有機溶剤のなかでも際立っています。出た蒸気は作業者の呼吸の高さを通り過ぎて床に達し、ピット、機械の脚元、パレットの陰に溜まります。

換気設備は天井付近に付いていることが多く、床に溜まった層はそのまま残ります。作業環境測定の結果が基準内でも、しゃがんだときや下向きの作業で濃度が上がるのはこのためです。

吸い込み口を低い位置に下ろすと建屋の工事になる

洗浄機は搬入と搬出の導線に合わせて据え付けてあり、動かせません。そこへ上方からのフードを足しても、空気より4.5倍重い蒸気はそちらへ向かいません。

捕らえるには槽の縁か、それより低い位置で吸う必要があります。床に近いところへ吸い込み口を設けるとなると、ダクトの経路は建屋の工事から考えることになります。

工程いま行われている対策課題
蒸気洗浄(ベーパー脱脂)槽のフタ、フリーボードの確保部品を出し入れする数秒で開口部から蒸気が出る
浸漬洗浄・すすぎ局所排気フード、作業時間の管理蒸気が槽の縁より下に溜まり、上方のフードまで上がってこない
乾燥待ち・仕上げ自然乾燥、全体換気部品に残った液が乾くまで、ラックのまわりに蒸気が出続ける
手拭き・部分洗浄保護具、こまめな換気作業位置が定まらず、固定した設備で追えない
溶接・加熱工程との併設作業区画の分離流れた蒸気が温まった面に触れると分解生成物になる

どの対策も、蒸気を上から吸い上げて屋外へ運ぶ考え方です。下へ向かうものを上から追うぶん、必要な風量は大きくなります。

トリクロロエチレンを除去する有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」

洗浄機のそばで出る蒸気への対策の一つに、有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」があります。蒸気が出ている場所へ近づけて、発生源をピンポイントで除去できる装置です。

日本の特許(特許第7503858号)を取得したTOGAフィルターは99%以上の除去率を持ち、世界30ヶ国以上で導入されています。

有害ガス浄化装置 TOGA-MAC1-AI

有害ガス浄化装置の特徴

対象ガスに合わせて選べるフィルター

TOGAフィルターは、物理吸着と化学反応を組み合わせた多層構造で有害ガスを捕らえます。フィルターは対象となるガスに合わせて選べるため、塩素系の有機溶剤にはそれに適した構成を組み合わせて使います。推奨交換周期は約1年です。

TOGAフィルターの多層構造

電装部と有害ガス通路を分離した構造

トリクロロエチレンは、水分と光のもとで少しずつ分解して腐食性の塩酸を生じます。装置の内部では電装部と有害ガスの通る経路を分けてあるため、吸い込んだ蒸気がモーターや制御基板に触れることがありません。

電装部と有害ガス通路を分離した内部構造

ダクト工事なしで洗浄機のそばに置ける

浄化した空気を室内に戻すため、屋外への排気口とダクトを設ける必要がありません。建屋側の工事を伴わないので、槽の開口部、部品を並べるラックの脇、手拭きをする台のそばに置けます。

空調で温めた空気を屋外へ捨てないため、排気量を増やしたときのような暖房負荷の増加も起きません。ラインの配置が変われば、装置もそこへ動かせます。

トリクロロエチレン対策は、床に下りる前に取ることから

脱脂洗浄のトリクロロエチレン対策は、設備を大きくすることよりも、蒸気が出た場所でどれだけ捕らえられるかで決まります。床に達してしまえば、天井側の換気では動かせません。

対策をご検討中の方は、まずはお使いの洗浄機のまわりでデモテストを実施し、ご自身の現場で濃度がどこまで下がるかを確かめたうえで導入の可否をご判断ください。私たちTOGAが、洗浄機の配置と作業導線に合わせた設置の考え方をご一緒に整理します。

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