1-ブタノール(n-ブタノール)を使っている現場では、においで存在に気づくことがほとんどです。ただ、においを感じてから換気を強めるという順番だと、すでに一定の濃度にさらされた後になります。

ACGIHが示すTWAは20ppmで、その根拠は眼と上気道への刺激。日本産業衛生学会は最大許容濃度として50ppmを示しており、これは作業中のいかなる時間でも超えてはならない値です。

ここでは、1-ブタノールの蒸気が室内に残りやすい理由を整理し、ブタノール除去を発生源で行う方法を紹介します。

沸点117℃の1-ブタノールが蒸気を出す工程と滞留のしかた

1-ブタノールは沸点117℃、20℃での蒸気圧0.67kPaの液体です。アセトンやメチルエチルケトンほど急激には揮発しませんが、そのぶん蒸気の発生がゆるやかに続き、作業を終えたあとも室内に残りやすい性質があります。

引火点は29℃(密閉式)、爆発範囲は1.4〜11.3vol%。空調の効きが弱い夏場の作業室では、室温が引火点に近づくことも珍しくありません。蒸気の相対密度は空気の約2.6倍で、床面付近に滞留します。

1-ブタノールの主な用途は、塗料溶剤、酢酸ブチルやアクリル酸ブチルの原料、可塑剤(DBP)原料、安定剤、医薬品、合成香料です。国内生産量は年間50万トン規模で、大半を工業用途が占めます。

研究・分析の領域でも、抽出やクロマトグラフィーの展開溶媒として使われます。労働安全衛生法では有機溶剤中毒予防規則の第2種有機溶剤等に、消防法では第4類第2石油類に区分されています。

眼と聴覚器に及ぶ1-ブタノールばく露の影響と許容濃度

1-ブタノールのGHS分類では、眼に対する重篤な損傷(区分1)が付いています。刺激ではなく損傷の区分であり、飛沫が眼に入った場合の影響は小さくありません。

反復ばく露による標的臓器には、中枢神経系に加えて聴覚器が挙げられており、溶剤としては特徴的です。皮膚に対しては刺激性(区分2)があり、日本産業衛生学会の許容濃度には経皮吸収を示す「皮」の記号が付いています。

数値としては、日本産業衛生学会が最大許容濃度50ppm(150mg/m³)、ACGIHがTWA 20ppm、作業環境評価基準が25ppmです。最大許容濃度は平均値ではなく上限として管理する値なので、一日の平均が低く収まっていても、投入や開封の瞬間に生じるピークを抑えられているかが問われます。

現場ごとの1-ブタノール対策の現状と課題

研究・分析の現場での対策と課題

研究室での1-ブタノールは、抽出溶媒や展開溶媒として、少量を何度も使う形で登場します。

ドラフトチャンバーの中で扱うのが原則ですが、実際の運用では

  • 展開槽のふたを開けた瞬間ににおいが立つ
  • 分液後の有機層を、ドラフトの外の実験台で分注してしまう
  • 廃液を溜めているポリタンクの周りだけ、いつもにおいが残る

といった状況が生まれます。

1-ブタノールは揮発がゆるやかなぶん、こぼれた液や含ませたワイパーから長く蒸発を続けます。作業自体は数分でも、そのあとの時間帯に室内へ拡散していきます。

課題カテゴリ研究・分析の現場で起きていること
設備面ドラフトの台数が限られ、少量作業が実験台に流れる
運用面展開槽や廃液容器を開閉するたびに蒸気が室内へ出る
作業環境揮発がゆるやかで、作業を終えたあとも蒸気が室内に残る
安全面引火点29℃のため、夏場の室温では引火の条件に近づく

製造・調合の現場での対策と課題

塗料の調合では、1-ブタノールを他の溶剤と組み合わせて仕込みます。酢酸ブチルやアクリル酸ブチル、可塑剤の原料として反応工程に投入する場面もあります。

開放型の調合タンクや充填工程では、局所排気と防毒マスクの併用が一般的です。それでも「タンクの投入口に顔を近づけたときが一番きつい」「マスクの吸収缶をいつ替えるべきか、においが薄いと判断しづらい」という声が出てきます。

さらに1-ブタノールは、100℃に加熱するとアルミニウムと反応して引火性・爆発性の気体を生じるとSDSに記載があり、加温工程では接液部材の選定も含めた管理が必要になります。

課題カテゴリ製造・調合の現場で起きていること
設備面局所排気フードの捕捉範囲から作業位置が外れやすい
運用面吸収缶の交換時期の判断が、作業者の感覚に委ねられる
作業環境排気とともに空調した空気も屋外へ出るため、季節によって室内環境が安定しない
安全面加温工程ではアルミニウム部材との反応にも配慮が必要になる

どちらの現場にも共通するのは、対策の効き目が「囲いの中にいる時間」に限られている点です。1-ブタノールのように蒸発がゆるやかで長く続く溶剤では、囲いの外に出たあとの時間のほうが長くなることもあります。

ブタノール除去をダクトレスで行う「TOGA-MAC1-AI」

1-ブタノールのばく露リスクを下げる手段の一つに、酸性用有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」があります。この装置は、1-ブタノールを含むさまざまな有害ガスを99%以上除去する国際特許取得のTOGA®フィルターを搭載し、世界30ヶ国以上で導入されています。

ダクト工事が不要なため、ドラフトが空いていない実験台や、フードの捕捉範囲から外れた調合位置にも置けます。

有害ガス浄化装置

有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」の特徴

高い1-ブタノール除去性能

TOGA®フィルターは、物理吸着・化学反応・中和を組み合わせた多層構造で有害ガスを捕らえ、99%以上の除去率を実現しています。国際特許を取得した独自のフィルター構造により、1-ブタノールのように低濃度でゆるやかに発生し続ける蒸気も、通過する気流から連続して取り除きます。

TOGAフィルターの多層構造

電装部と有害ガス通路の完全分離による引火リスク低減

引火点29℃の1-ブタノールは、夏場の室温そのものが引火の条件に近づきます。「TOGA-MAC1-AI」は電装部と有害ガスの通路を完全に分離した独自構造を採用しており、装置内を通る1-ブタノール蒸気が電気系統に触れることがありません。

空気より重い蒸気が床付近に溜まりやすい環境でも、発生源のそばに置いて吸い込ませられます。

電装部と有害ガス通路を分離した内部構造

ダクトレスで、囲いの外の作業位置にも設置できる

ダクトの引き回しがないため、展開槽を開ける場所、分注する実験台、タンクの投入口の脇といった、蒸気が実際に出ている位置に近づけて設置できます。

建屋の改修を伴わないので、実験テーマの入れ替わりや調合ラインの組み替えに合わせて移動させることもできます。排気を屋外へ捨てないぶん、空調した空気を室内に残せます。

廃液が出ず、フィルター交換は約1年に1回

処理に水を使わないため、洗浄水由来の廃液が発生しません。TOGA®フィルターの推奨交換周期は約1年で、日常の管理はフィルターの交換時期を追うことが中心になります。交換の目安が周期で決まるため、年間の保守計画に組み込みやすくなります。

1-ブタノール対策は呼吸域の濃度を下げることから

1-ブタノールは、においで気づける物質です。ただし、においで気づけることと、許容濃度の範囲に収まっていることは別の話です。ACGIHのTWA 20ppm、最大許容濃度50ppmという水準を前提にするなら、作業者の呼吸域そのものの濃度を下げる手立てが必要になります。

ブタノール除去をご検討中の方は、まずはお使いの現場でデモテストを実施し、実際の作業のなかで濃度とにおいがどう変わるかを確かめたうえで、導入の可否をご判断ください。私たちTOGAが、作業の流れに合わせた設置位置の考え方をご一緒に整理します。

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