ジクロロメタン(塩化メチレン)は、有機合成の反応溶媒、抽出、カラムクロマトグラフィー、器具の洗浄まで、ひとつの実験室で何度も登場します。沸点が低く濃縮で飛ばしやすいため、置き換えの難しい場面が残ります。

扱いにくさも、この沸点の低さから来ています。39.75℃で沸騰するので、夏場の室温や手で握った温度でも勢いよく蒸発します。フタを開けた瞬間から蒸気が出ていきます。

ここでは、ドラフトを増設せずに、実験台で出るジクロロメタンの蒸気を発生源で除去する方法を整理します。

ジクロロメタンの発がん性と、室温でも沸く蒸発のしやすさ

ジクロロメタンは発がん性が区分1Aに分類されています。繰り返しばく露した場合の影響としては、中枢神経系、肝臓、男性の生殖器への障害が挙げられています。

管理濃度は50ppm、日本産業衛生学会の許容濃度も同じ50ppmです。特別管理物質に指定されており、誰がいつどれだけ扱ったかの記録を30年残すことになります。

20℃での蒸気圧は約58kPaあります。同じ温度の水と比べて25倍ほどの高さで、20℃で気化すると空気はきわめて急速に有害濃度に達することがあるとされています。

吸い込むと、めまい、頭痛、吐き気が出ます。ばく露により一酸化炭素中毒を引き起こすことがあるとされており、溶剤そのものの麻酔作用とは別の経路でも体に影響します。

【作業別】ジクロロメタン対策の現状と課題

有機合成や分析の現場で聞こえてくるのは、ドラフトの性能ではなく、ドラフトの台数と順番の話です。

  • 「ドラフトが埋まっていて、秤量と分取は実験台でやってしまう」(有機合成のラボ)
  • 「エバポレーターを回している間、そのそばで次の準備をしている」(合成・精製)
  • 「ドラフトの前が混んでいて、順番を待つあいだ試料を台に置いたままにする」(分析ラボ)
  • 「廃液を移し替えるときに、においが一気に立つ」(器具洗浄・廃液処理)

いずれも、ドラフトの性能ではなく、ドラフトの前に立てない時間に原因があります。

実験台で行う秤量と分取

反応そのものはドラフトの中で行っても、その手前の秤量、分取、器具の下準備は実験台で済ませることが多くなります。ドラフトは台数が限られ、長時間の反応で埋まっているためです。

ジクロロメタンは注いだそばから蒸発するので、天秤の上やメスシリンダーの口からも出ていきます。短い作業でも、蒸気はその場に残ります。

濃縮と廃液の移し替えは流しのそばで行う

エバポレーターは重く、配管と電源の都合で置き場所が決まっています。ドラフトに入っていないことも多く、減圧を解いてフラスコを外す瞬間に、残ったジクロロメタンが出ます。

洗浄した器具や廃液の移し替えも、流しの前で行います。どちらもドラフトから離れた場所で、容器の口が開く作業です。

ドラフトを増やしても、持ち出した器具から蒸発が続く

ジクロロメタンを使う操作は、秤量、分液、濃縮、器具の洗浄と実験室じゅうに散らばります。ドラフトを1台増やしても、その中で完結する作業がひとつ増えるだけです。

沸点が39.75℃なので、ドラフトから出した分液ロートや濃縮後のフラスコは、実験台に戻したあとも蒸発を続けます。器具が動いていく先まで、囲いで追うことはできません。

作業いま行われている対策課題
秤量・分取ドラフト、こまめな換気ドラフトが埋まっていると実験台で行うことになる
抽出・分液ドラフト、保護具分液ロートの開栓でガス抜きをするたびに蒸気が出る
濃縮(エバポレーター)装置からの排気、冷却トラップトラップで捕らえきれない分が装置のまわりに残る
器具洗浄・廃液の移し替え流しの局所排気、フタ付き容器移し替えの数秒で容器の口から蒸気が出る

どの対策も、出た蒸気を運び出す仕組みです。ジクロロメタンは容器を開けた瞬間から出るので、運び出す量を増やしても、出てから届くまでの間が残ります。

ジクロロメタンを除去する有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」

実験台で出る蒸気への対策の一つに、有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」があります。蒸気が出ている場所へ近づけて、発生源をピンポイントで除去できる装置です。

日本の特許(特許第7503858号)を取得したTOGAフィルターは99%以上の除去率を持ち、世界30ヶ国以上で導入されています。

有害ガス浄化装置 TOGA-MAC1-AI

有害ガス浄化装置の特徴

対象ガスに合わせて選べるフィルター

TOGAフィルターは、物理吸着と化学反応を組み合わせた多層構造で有害ガスを捕らえます。フィルターは対象となるガスに合わせて選べるため、塩素系の有機溶剤にはそれに適した構成を組み合わせて使います。推奨交換周期は約1年です。

TOGAフィルターの多層構造

電装部と有害ガス通路を分離した構造

ジクロロメタンは、高温の面に触れると分解して塩化水素を生じます。装置の内部では電装部と有害ガスの通る経路を分けてあるため、吸い込んだ蒸気がモーターや制御基板に触れることがありません。

電装部と有害ガス通路を分離した内部構造

ダクト工事なしで実験台に置ける

浄化した空気を室内に戻すため、屋外への排気口とダクトを設ける必要がありません。建屋側の工事を伴わないので、天秤の横、エバポレーターのそば、廃液を移し替える流しの脇に置けます。

実験のテーマが変われば、装置をそのまま別の台へ移せます。排気を屋外へ捨てないため、空調で温めた空気を室内に残せます。

ジクロロメタン対策は、フタを開ける場所で取ることから

有機合成や分析のジクロロメタン対策は、設備を大きくすることよりも、容器を開ける場所でどれだけ捕らえられるかで決まります。室温でも沸く溶剤なので、出てからでは追いかけにくくなります。

対策をご検討中の方は、まずはお使いの実験台でデモテストを実施し、ご自身の現場で濃度がどこまで下がるかを確かめたうえで導入の可否をご判断ください。私たちTOGAが、実験室の配置と作業導線に合わせた設置の考え方をご一緒に整理します。

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