陽極酸化や酸洗浄の現場で硫酸ミストの対策を調べはじめると、たいていスクラバーの話に行き着きます。

ただ、30リットル程度の処理槽ひとつのために、建屋の改修から始まる設備を入れるわけにはいきません。かといって、労働基準監督署から指摘を受ければ何か手を打つ必要があります。

ここでは、硫酸ミストが槽から出てくる仕組みを整理したうえで、スクラバーを置けない規模の現場で取れる手立てを紹介します。

硫酸ミストが出る場面と、体への影響

硫酸は沸点が高く、常温では蒸発しません。それでも空気中に出るのは、液から上がってきた泡が液面で弾けて、硫酸を含んだ液滴が飛ぶからです。蒸気ではなく飛沫です。

アルマイト処理は、アルミの部品を錆びにくく、傷がつきにくくする処理です。自動車部品、航空機の内外装、スマートフォンの筐体、半導体部品などに使われます。

硫酸ミストが出るのは、次の場面です。

  • アルマイトの通電中。陰極から水素が出続ける
  • 槽の空気攪拌。液の温度を均一に保つために吹き込む空気も、液面で弾ける
  • 酸洗。通電しなくても、鉄と硫酸が反応して水素が出る。液を温めて使うので泡も増える
  • 部品の出し入れ。液面が揺れ、引き上げた部品から液が垂れる

どれも作業をしているあいだは続きます。換気で薄めても、発生そのものは止まりません。

皮膚や眼に付けば薬傷を起こし、吸い込めば気道が刺激されます。国際がん研究機関は、硫酸を含む強い無機酸のミストを職業上浴びることを、発がん性のある区分に分類しています。

【分野別】硫酸ミスト対策の現状と課題

表面処理の現場で聞こえてくるのは、装置の性能よりも、規模と法令のあいだで板挟みになっている話です。

  • 「槽は小さいのに、スクラバーの見積もりは建屋の改修から始まる」(陽極酸化の試作ライン)
  • 「監督署の指摘で対策が要ることになったが、何を入れれば足りるのか分からない」(表面処理の受託加工)
  • 「排気フードはあるが、治具を出し入れするときは顔が槽の真上にくる」(アルマイト処理)
  • 「引き上げた部品から液が垂れるので、槽の外でも気を抜けない」(金属の酸洗浄)

といった声です。法令の位置づけが、この板挟みをややこしくしています。

硫酸は特定化学物質の第3類物質で、第1類や第2類のような局所排気装置の設置義務はありません。ただしリスクアセスメントの対象物質なので、ばく露を低く抑える義務と、皮膚への障害を防ぐ保護具の義務があります。

監督署が見るのは、装置を入れたかどうかではなく、人が吸っていない状態をつくれているかです。

治具を吊るして槽に入れ、引き上げ、液を切って次の槽へ運ぶ。この動きは槽の真上を通りますし、引き上げた部品からは液が垂れます。槽の中だけを囲っても、垂れた先と運んでいる途中は囲いの外です。

分野硫酸を扱う主な工程現在の主な対策課題
アルミの陽極酸化(アルマイト)硫酸浴での電解、治具の出し入れプッシュプル型換気、槽縁の排気スリット通電中は連続してミストが出る。治具を出し入れするとき顔が槽の真上にくる
金属の酸洗浄・脱スケール硫酸浴への浸漬と引き上げ、水洗局所排気フード、保護具引き上げた部品から液が垂れ、槽の外でもミストが立つ
試作・少量ライン小型槽での連続試験実験用フード、可搬式の排気槽の規模とスクラバーの規模が合わず、設備投資の判断がつかない
表面処理の受託加工複数の処理槽を並べた一括処理全体換気槽ごとに液も温度も違い、まとめて排気すると効きにくい
めっきの前処理酸活性化、中和局所排気前処理から本処理へ運ぶ導線が槽の間を通る

どの対策も、槽の上の空気を屋外へ運ぶ設計になっています。運ぶ量を増やせば効きますが、そのぶん設備は大きくなります。スクラバーの規模と槽の規模が合わないという、最初の問題に戻ります。

硫酸ミストを除去する有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」

硫酸ミストのばく露を抑える手段の一つに、有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」があります。ミストが立つ槽へ近づけて、発生源をピンポイントで除去できる装置です。

日本の特許(特許第7503858号)を取得したTOGA®フィルターは99%以上の除去率を持ち、世界30ヶ国以上で導入されています。

有害ガス浄化装置

有害ガス浄化装置の特徴

高い硫酸ミスト除去性能

TOGA®フィルターは、物理吸着・化学反応・中和を組み合わせた多層構造で有害ガスを捕らえ、99%以上の除去率を実現しています。日本の特許(特許第7503858号)を取得した独自のフィルター構造により、槽から連続して飛ぶ酸のミストも、通過する気流から取り除きます。

TOGAフィルターの多層構造

電装部と有害ガス通路の完全分離による腐食対策

硫酸は金属を腐食し、水素を発生させます。酸のミストを吸い込む装置では、電装部をどう守るかが寿命を左右します。

「TOGA-MAC1-AI」は電装部と有害ガスの通路を完全に分離した独自構造で、吸い込んだミストが電気系統に触れることがありません。酸のミストを吸い込み続けても、電気系統が影響を受けません。

電装部と有害ガス通路を分離した内部構造

ダクト工事不要で、槽のそばに置ける

ダクトの引き回しがないため、槽の縁、治具を置く台のそば、引き上げた部品の水切り場所など、囲いから外れる位置に設置できます。

建屋の改修を伴わないので、処理する品目やラインの配置が変わっても動かせます。排気を屋外へ捨てないぶん、空調した空気を室内に残せます。

廃液が出ず、フィルター交換は約1年に1回

硫酸は水質汚濁防止法の指定物質で、洗浄水を使う方式では排水側の管理が加わります。この装置は処理に水を使わないため、その工程自体が生じません。

TOGA®フィルターの推奨交換周期は約1年で、日常の管理はフィルターの交換時期を追うことが中心になります。

硫酸ミスト対策は、槽から出た先を断つことから

硫酸ミストは、槽が動いている限り出続けます。設備を大きくして運び出す方向だけでなく、人が立っている場所で取り除く方向も選べます。

硫酸ミストの除去をご検討中の方は、まずは実際の槽まわりでデモテストを実施し、ご自身の現場で濃度がどこまで下がるかを確かめたうえで導入の可否をご判断ください。私たちTOGAが、槽の配置と作業導線に合わせた設置の考え方をご一緒に整理します。

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