エチルベンゼンは、有機溶剤でありながら特定化学物質障害予防規則の対象です。労働安全衛生法では特定化学物質第2類物質、かつ健康障害防止指針が公表されたがん原性物質として扱われます。

混合キシレンの一成分として塗料に含まれることが多く、「キシレンを使っているつもりが、規制上はエチルベンゼンの管理も要る」という状況が生まれやすい物質でもあります。

ここでは、エチルベンゼン除去が現場で難しくなる理由を整理し、ダクト工事を伴わずに発生源で蒸気を処理する方法を紹介します。

塗装工程でエチルベンゼンが発生する場面と、空気の3.7倍という蒸気の重さ

エチルベンゼンは沸点136℃で、揮発の速さは穏やかです。そのぶん蒸発が長く続き、作業を終えたあとの空間に残ります。

引火点は22.5℃です。室温が引火点を上回る季節が長く、調色や洗浄を行う作業台まわりにも着火の条件が揃います。

蒸気は空気の3.7倍の重さがあり、上に抜けにくく、ピットや床面など低い場所に溜まります。現場で人が触れるのは、油性塗料や接着剤、インキの溶剤としての形がほとんどです。

がん原性物質としての位置づけと許容濃度20ppm

エチルベンゼンは、発がんのおそれが疑われる物質として分類されています。国際がん研究機関の評価も、人に対して発がん性がある可能性のある区分です。胎児への悪影響のおそれも指摘されています。

繰り返しばく露したときに影響が出る部位として、聴覚器と神経系が挙げられている点も、有機溶剤としては特徴的です。

許容濃度は20ppmで、日本産業衛生学会・ACGIH・管理濃度のいずれも同じ水準です。皮膚からも吸収されるため、呼吸だけを守れば足りるわけではありません。

住宅の室内空気については、シックハウス症候群との関連が疑われることから、厚生労働省が作業現場の許容濃度のおよそ20分の1にあたる指針値を定めています。

【分野別】エチルベンゼン対策の現状と課題

エチルベンゼンが環境中へ排出されている量を業種別に見ると、自動車をはじめとする輸送用機械器具の製造が突出しています。この物質が問題になるのは、塗装を行う現場が中心です。

その現場から聞こえてくるのは、設備の性能そのものより、規制対応と実作業のずれについての声です。

  • 「ブースの中は整っているが、調色と洗浄はブースの外でやっている」(輸送用機械器具の塗装)
  • 「キシレン扱いで運用してきたので、特化則の記録が後追いになっている」(金属製品の塗装)
  • 「少量の塗り分けは、わざわざブースを使わず作業台でやってしまう」(一般機械器具の製造)
  • 「試験室で少量ずつ扱うので、対策の優先順位が上がらないまま続いている」(塗料の品質管理)

といった声です。塗装現場でよく効いてくるのが、測定結果と実感のずれです。作業環境測定は第1管理区分で問題なし。ところが測定点はブースの中に置かれていて、実際に人が長く立っているのは調色台とガン洗浄の場所です。数字は良好なのに現場の不安が消えない、という状態が続きます。

ブースを増やせば解決する、とも言えません。塗装ブースは場所も費用も大きく、ラインを止めて工事する話になります。稟議に上がっては先送りになる、という経過をたどった現場は少なくないはずです。

補修やタッチアップになると、そもそも場所が固定できません。大きな製品の一部を直す作業では、人が製品のほうへ動きます。局所排気は動かせないので、結局は保護具だけが頼りになります。

エチルベンゼンは揮発が穏やかなぶん、扱った直後だけでなく、そのあとも蒸発が続きます。作業している数分だけを見て対策を組むと、そのあと同じ場所にいる時間が抜け落ちます。

分野エチルベンゼンを扱う主な作業現在の主な対策課題
輸送用機械器具製造塗料の吹き付け、調色、スプレーガン洗浄塗装ブース、局所排気、特化則に基づく作業環境測定調色と洗浄はブース外で行われることが多く、呼吸域の濃度が下がらない
金属製品製造油性塗料の塗装、下地処理後の塗り重ね局所排気、防毒マスク混合キシレンとして購入するため含有量を把握しにくく、管理の対象から漏れやすい
一般機械器具製造少量の塗り分け、部品の拭き取り、接着全体換気、保護具ブースを使うほどの作業ではないため、作業台まわりに蒸気が残ったままになる
プラスチック製品製造接着剤・インキの使用、印刷局所排気フードフードの捕捉範囲から作業位置が外れやすい
塗料の試験室・品質管理試験片の作製、粘度・色調の確認、器具洗浄ドラフト、局所排気少量を繰り返し扱うため対策が後回しになり、ドラフトの外での作業が常態化する

いずれの方法も、発生したエチルベンゼン蒸気を屋外へ運ぶ設計になっており、蒸気そのものを減らしているわけではありません。ブースの外に出た瞬間に守りが途切れる構図は共通しています。

必要なのは、ブースをもう一つ作ることではなく、ブースの外で人が立っている場所の空気をその場で薄くする手立てです。調色台の隣、洗浄場所の脇といった、いままで対策の外にあった位置に置けるかどうかが分かれ目になります。

エチルベンゼン除去を発生源で行う「TOGA-MAC1-AI」

エチルベンゼンのばく露リスクを下げる手段の一つに、有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」があります。電装部と有害ガスの通路を分離した本体に、対象となるガスに合わせたフィルターを組み合わせて使う装置です。

ただし、これは発生源のそばに置いて、その場の蒸気を処理する機器です。吹き付け塗装そのものは塗装ブースが受け持つ領域で、大量の空気を動かす設備の代わりにはなりません。塗料ミストが飛ぶ場所に、ガス用のフィルターを置くこともできません。

効くのは、ブースを立てるほどではないけれど蒸気は出る作業です。調色や秤量、スプレーガンや器具の洗浄、塗料の試験室での作業がこれにあたります。

国際特許取得のTOGA®フィルターは99%以上の除去率を持ち、世界30ヶ国以上で導入されています。

ダクト工事が不要なため、調色台やガン洗浄の作業位置など、蒸気が実際に出ている場所に置いて処理できます。

有害ガス浄化装置

有害ガス浄化装置「TOGA-MAC1-AI」の特徴

高いエチルベンゼン除去性能

TOGA®フィルターは、物理吸着・化学反応・中和を組み合わせた多層構造で有害ガスを捕らえ、99%以上の除去率を実現しています。国際特許を取得した独自のフィルター構造により、許容濃度20ppmという低い水準で管理が必要な蒸気も、通過する気流から連続して取り除きます。

TOGAフィルターの多層構造

電装部と有害ガス通路の完全分離による引火リスク低減

引火点22.5℃のエチルベンゼンは、夏場の作業室では室温が引火点を上回ります。「TOGA-MAC1-AI」は電装部と有害ガスの通路を完全に分離した独自構造で、装置内を通る蒸気が電気系統に触れることがありません。可燃性の溶剤を扱う場所で、この本体が選ばれる理由です。

空気の約3.7倍という重い蒸気が低い場所に溜まる環境でも、発生源のそばに置いて吸い込ませられます。

電装部と有害ガス通路を分離した内部構造

ダクト工事不要で、ブースの外の作業位置にも設置できる

ダクトの引き回しがないため、調色台、スプレーガンの洗浄場所、塗料の試験室といった、塗装ブースの囲いから外れる場所に設置できます。

建屋の改修を伴わないので、ラインのレイアウト変更や生産品目の切り替えに合わせて移動させることもできます。排気を屋外へ捨てないぶん、空調した空気を室内に残せます。

廃液が出ず、フィルター交換は約1年に1回

処理に水を使わないため、洗浄水由来の廃液が発生しません。エチルベンゼンは水生環境有害性の区分が高く、排水側の管理も負担になりますが、その工程自体が生じません。

TOGA®フィルターの推奨交換周期は約1年で、日常の管理はフィルターの交換時期を追うことが中心になります。

エチルベンゼン対策は発生源での除去から始める

エチルベンゼンは、特化則の対象でありながら混合キシレンとして現場に入ってくるため、管理の網から漏れやすい物質です。許容濃度20ppmという水準を前提にするなら、ブースの外の呼吸域まで含めて濃度を下げる必要があります。

エチルベンゼン除去をご検討中の方は、まずは実際の作業場所でデモテストを実施し、ご自身の現場で濃度がどこまで下がるかを確かめたうえで導入の可否をご判断ください。私たちTOGAが、工程と作業導線に合わせた設置の考え方をご一緒に整理します。

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