研究施設では、実験や分析の過程で多種多様な有機溶剤が使用され、それに伴う揮発性有機化合物の発生が避けられません。これらの化合物は、研究者の健康へのリスクを引き起こすだけでなく、作業環境全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
TOGAフィルターは、これらの有機溶剤を効果的に除去し、安全で快適な環境を保つためのソリューションです。一般的な活性炭フィルターが物理吸着のみに頼るのに対し、TOGAフィルターは「化学反応」と「中和反応」を組み合わせて、幅広い有害ガスに対応します。
ここではTOGAフィルターの性能テストにおいて、99%以上除去が可能な有機溶剤のうち、研究施設などで主に発生する代表的な対象物質についてご紹介します。
TOGAフィルターに関する良くあるご質問
物理吸着、化学反応、中和反応の3種類のフィルター組み合わせを使った常温常湿での試験により導き出された理論値が根拠となっています。
実際の除去率は、3つのフィルターの組み合わせと、温度・湿度、発生する有害ガスの濃度などの作業環境によって変わるため、必ずしも99%以上パフォーマンスを発揮できるわけではありません。
そのため、製品の導入時には作業環境に合わせたフィルターの組み合わせをご用意して現場でデモテストを行わせていただきます。
デモテストの様子
フィルターの性能はどのくらい長持ちするのでしょうか?
実際に弊社の製品を導入いただいたお客様の作業環境ではおおむね1年間でフィルター交換を推奨する場合が多いです。
フィルターの寿命を試算する場合は、ヒアリングシートへのご記入をお願いしております。現場での使用時間や有害ガスの濃度などの情報をご提供いただくことで、弊社のバックデータをもとに試算が可能になっております。
アンモニアのフィルター寿命の試算例
アンモニア濃度(ppm) | 使用時間(month) |
---|---|
30 | 5.39 |
20 | 8.09 |
10 | 16.18 |
※使用時間:1hr / day 20day / month 基準の場合
酢酸
酢酸は、刺激臭のある無色の液体で、水に溶けやすく、食酢の主成分としても知られています。
発生シチュエーション
有機合成反応
アセチル化反応
有機化合物にアセチル基を導入する反応です。アセチル化剤として酢酸や無水酢酸などが用いられます。例えば、アスピリンの合成などが挙げられます。
エステル化反応
カルボン酸とアルコールを反応させてエステルを合成する反応です。酢酸は、エタノールと反応して酢酸エチルを、ブタノールと反応して酢酸ブチルなど、様々なエステルを合成する際に使用されます。
化学分析の洗浄工程
HPLC (高速液体クロマトグラフィー) のカラム洗浄
HPLCは、混合物を分離・分析する手法です。分析後にカラムに残留した物質を洗浄するために、酢酸水溶液が使用されることがあります。
分析機器の洗浄
酢酸は、水垢やスケールなどの汚れを落とす効果があるため、様々な分析機器の洗浄にも使用されます。
その他
酢酸緩衝液の調製
酢酸と酢酸ナトリウムを混合することで、pHを一定に保つ緩衝液を調製することができます。生化学実験などで広く使用されています。
pH調整
溶液のpHを酸性側に調整するために、酢酸が使用されることがあります。
健康への影響
酢酸の蒸気を吸入すると、呼吸器や目、喉に強い刺激を与え、長期的には呼吸機能の低下を引き起こす恐れがあります。また、皮膚に直接触れると刺激性皮膚炎の原因となります。
アンモニア
アンモニアは、刺激臭のある無色の気体で、水に溶けやすく、アルカリ性を示します。
発生シチュエーション
冷却装置の冷媒
冷凍庫や冷却装置
アンモニアは、優れた冷却能力を持つため、大型の冷凍庫や冷却装置の冷媒として使用されています。しかし、配管の破損やメンテナンス時など、アンモニアが漏洩する可能性があります。
化学実験の副産物
アミン類の合成
アンモニアは、アミン類を合成する際の原料として使用されます。
窒素化合物の分解反応
窒素を含む化合物を加熱したり、他の物質と反応させたりすると、アンモニアが発生することがあります。
生物学的研究
細胞培養や微生物の培養
細胞や微生物を培養する培地のpH調整に、アンモニア水溶液が使用されることがあります。
その他
タンパク質の分析やDNAの抽出など、様々な生物学的研究において、アンモニアが使用されることがあります。
健康への影響
アンモニアの吸入は、呼吸困難や喉、鼻、目への強い刺激を引き起こします。また、高濃度のアンモニアに暴露されると、肺への損傷や慢性的な呼吸器疾患のリスクが増加するため、適切な換気や除去が不可欠です。
アセトン
アセトンは、マニキュアの除光液などでもおなじみの、無色透明で揮発性の高い液体です。特有の甘い臭いがあり、引火性が高いため、取り扱いには注意が必要です。
発生シチュエーション
実験器具の洗浄
アセトンは、油脂やワックスなどの有機物をよく溶解するため、実験器具に付着した汚れを落とすのに使用されます。ガラス器具や金属器具の洗浄に広く用いられています。
有機化合物の溶媒
アセトンは、多くの有機化合物を溶解できるため、塗料、接着剤、樹脂などの溶媒として使用されています。
健康への影響
アセトンの吸入は、頭痛やめまい、呼吸器への刺激を引き起こす可能性があります。また、アセトン蒸気の長時間の暴露は中枢神経系に影響を及ぼし、倦怠感や混乱を引き起こす恐れもあります。
クロロホルム
クロロホルムは、かつては広く使用されていましたが、現在ではその毒性のために使用が制限されている物質です。
発生シチュエーション
溶媒としての利用
クロロホルムは、脂質や樹脂、ゴム、アルカロイドなどを溶解する能力に優れているため、特定の化学反応や抽出プロセスにおいて溶媒として使用されます。例えば、植物から特定の成分を抽出する場合や、工業的なプロセスで特定の物質を精製する場合などに利用されます。
NMR (核磁気共鳴) の溶媒
重水素化クロロホルム (CDCl3) は、NMR分光法において溶媒として広く使用されています。NMR分光法は、物質の分子構造を解析するために用いられる手法であり、重水素化クロロホルムは、多くの有機化合物を溶解し、NMRスペクトルに影響を与えないという特性から、溶媒として重宝されています。
過去の消毒剤としての利用
クロロホルムは、かつては消毒剤や麻酔薬として使用されていましたが、その毒性と発がん性が明らかになったため、現在ではほとんど使用されていません。しかし、古い医療施設や研究所などでは、過去の使用によって残留している可能性があります。
健康への影響
クロロホルムの蒸気を吸入すると、中枢神経系に影響を与え、頭痛、めまい、吐き気といった症状が現れることがあります。また、長期的な暴露は、肝臓や腎臓に負担をかけ、慢性的な健康リスクを引き起こす可能性があります。
塩化水素
塩化水素は、刺激臭のある無色の気体で、水に溶けると塩酸になります。
発生シチュエーション
酸処理
金属の表面処理
鉄鋼などの金属表面の酸化物や錆を取り除くために、塩酸を用いた酸洗いが行われます。この工程で、塩酸と金属が反応し、塩化水素ガスが発生します。
鉱物の精製
金属を含む鉱石から目的の金属を抽出する際にも、塩酸が使用されます。鉱石に含まれる金属と塩酸が反応し、塩化水素ガスが発生します。
洗浄工程
実験器具の洗浄
実験室では、ビーカーやフラスコなどのガラス器具を洗浄するために、希塩酸が使用されることがあります。特に、アルカリ性の汚れを落とすのに効果的です。
排水処理
工場や研究所から排出される排水には、様々な物質が含まれており、その中には酸性の物質も含まれます。これらの物質を中和するために、塩酸が使用されることがあります。
化学合成
塩素化反応
有機化合物に塩素を導入する反応において、塩化水素が副生成物として発生することがあります。
加水分解反応
有機化合物を水と反応させて分解する反応において、塩化水素が生成することがあります。
その他
塩化水素は、塩化ビニルやポリ塩化ビニルなどの合成樹脂の製造、医薬品や農薬の製造など、様々な化学合成の過程で発生する可能性があります。
健康への影響
塩化水素蒸気は、吸入すると呼吸器に強い刺激を与え、咳、呼吸困難、喉の痛みなどを引き起こします。また、高濃度に長期間暴露されると、肺や気道に損傷を与え、深刻な呼吸器疾患を引き起こすリスクがあります。皮膚に触れると火傷や刺激性皮膚炎を引き起こします。
ジエチルエーテル
ジエチルエーテルは、特有の甘い臭気を持つ無色の揮発性液体です。かつては医療現場で麻酔薬として広く使われていましたが、引火性が高く、爆発の危険性もあるため、今日ではその使用は限定的です。
発生シチュエーション
溶媒としての利用
有機化合物の抽出
ジエチルエーテルは、水と混ざりにくく、多くの有機化合物をよく溶解するという性質を持つため、有機化合物の抽出溶媒として広く使用されています。例えば、天然物から特定の成分を抽出する場合や、反応混合物から目的物を分離する場合などに利用されます。
グリニャール反応
グリニャール試薬と呼ばれる有機金属化合物を用いた反応は、有機合成において非常に重要な反応です。ジエチルエーテルは、グリニャール試薬の調製や反応溶媒として頻繁に使用されます。これは、ジエチルエーテルがグリニャール試薬と反応せず、安定に溶解させることができるためです。
過去の麻酔薬としての利用
吸入麻酔薬
ジエチルエーテルは、19世紀半ばから20世紀半ばにかけて、吸入麻酔薬として広く使用されていました。 しかし、前述の通り引火性が高く、爆発の危険性があること、また、吐き気や嘔吐などの副作用が多いことから、現在ではより安全な麻酔薬に置き換えられています。
健康への影響
ジエチルエーテルの蒸気を吸入すると、軽度の中枢神経抑制作用があり、頭痛、めまい、眠気などの症状を引き起こします。また、長時間の暴露は呼吸困難や意識障害を引き起こす可能性があり、高濃度での使用時には特に注意が必要です。
メタノール
メタノールは、無色透明で揮発性の高い液体であり、特有のアルコール臭があります。様々な用途で使用されており、その発生源も多岐にわたります。
発生シチュエーション
溶媒としての利用
HPLCの移動相
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) は、混合物を分離・分析する手法です。メタノールは、水と混ざりやすく、様々な有機化合物を溶解できるため、HPLCの移動相の成分として頻繁に利用されます。
有機合成の溶媒
メタノールは、多くの有機化合物を溶解できるため、有機合成反応の溶媒としても広く使用されています。反応溶媒としてだけでなく、再結晶や抽出などの精製操作にも用いられます。
試薬としての利用
エステル化反応
カルボン酸とアルコールを反応させてエステルを合成する反応をエステル化反応といいます。メタノールは、エステル化反応の試薬として、メチルエステルを合成するために使用されます。
メチル化反応
有機化合物にメチル基を導入する反応をメチル化反応といいます。メタノールは、メチル化剤として、様々な化合物のメチル化に利用されます。
健康への影響
メタノールの蒸気は、吸入すると頭痛や吐き気、視力障害を引き起こす可能性があります。特に、高濃度での暴露は中枢神経系への影響が強く、最悪の場合、失明や致死的な健康リスクを伴うことがあります。
酢酸エチル
酢酸エチルは、果実のような芳香を持つ無色の液体で、揮発性が高く、引火しやすい性質を持っています。様々な用途で使用されており、その発生源も多岐にわたります。
発生シチュエーション
溶媒としての利用
有機化合物の抽出
酢酸エチルは、水と混ざりにくく、多くの有機化合物を溶解できるため、有機化合物の抽出溶媒として広く使用されています。例えば、天然物から特定の成分を抽出する場合や、反応混合物から目的物を分離する場合などに利用されます。特に、カフェインの抽出などによく用いられます。
カラムクロマトグラフィーの展開溶媒
カラムクロマトグラフィーは、混合物を分離・精製する手法です。酢酸エチルは、極性が中程度で、様々な有機化合物を溶解できるため、カラムクロマトグラフィーの展開溶媒として頻繁に利用されます。
試薬としての利用
アセチル化反応
有機化合物にアセチル基を導入する反応をアセチル化反応といいます。酢酸エチルは、アセチル化剤として、様々な化合物のアセチル化に利用されます。
エステル化反応
カルボン酸とアルコールを反応させてエステルを合成する反応をエステル化反応といいます。酢酸エチルは、酢酸とエタノールから合成されるエステルであり、エステル化反応の生成物として得られます。
健康への影響
酢酸エチルを吸入すると、頭痛、めまい、喉や鼻への刺激を引き起こすことがあります。高濃度に長時間暴露されると、呼吸困難や意識障害のリスクもあり、特に密閉された環境では注意が必要です。また、皮膚に触れると刺激性があり、皮膚炎を引き起こす恐れもあります。
ヘキサン
ヘキサンは、無色透明で揮発性の高い液体であり、石油に似た臭いがあります。
発生シチュエーション
抽出プロセス
植物油の抽出
ヘキサンは、大豆や菜種などの種子から油を抽出する際に溶媒として使用されます。ヘキサンは油脂をよく溶解し、水と混ざりにくい性質を持つため、効率的に油を抽出することができます。
環境試料中の有機物の抽出
土壌や水などの環境試料に含まれる有機汚染物質を分析する際に、ヘキサンを用いた抽出が行われます。ヘキサンは、様々な有機化合物を溶解できるため、広範囲の汚染物質を抽出することができます。
分析化学
ガスクロマトグラフィーの溶媒
ガスクロマトグラフィーは、混合物を分離・分析する手法です。ヘキサンは、揮発性が高く、多くの有機化合物を溶解できるため、ガスクロマトグラフィーの溶媒として利用されます。
HPLCの移動相
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) でも、ヘキサンは移動相の成分として使用されることがあります。特に、脂溶性が高い化合物を分離する際に有効です。
健康への影響
ヘキサンの吸入は、中枢神経系に影響を及ぼし、長期的な暴露は神経障害や筋力低下、倦怠感といった症状を引き起こす可能性があります。また、高濃度のヘキサンにさらされると、呼吸器刺激や皮膚の乾燥、刺激性皮膚炎を引き起こすこともあり、保護具の着用と適切な換気が推奨されます。
トルエン
トルエンは、シンナーの主成分としても知られる、無色透明で特有の芳香族臭のある揮発性の高い液体です。
発生シチュエーション
溶媒としての利用
塗料、接着剤、インクなどの溶媒
トルエンは、多くの有機化合物を溶解できるため、塗料、接着剤、インク、樹脂などの溶媒として広く使用されています。
洗浄剤
トルエンは、油脂やグリースなどの汚れを落とす効果があるため、工業用の洗浄剤としても使用されています。
試薬としての利用
有機合成反応
トルエンは、様々な有機化合物を合成するための原料や溶媒として使用されます。
フリーデル・クラフツ反応
フリーデル・クラフツ反応は、芳香族化合物にアルキル基やアシル基を導入する反応です。トルエンは、この反応の溶媒として使用されることがあります。
その他
化学工業の原料
トルエンは、ベンゼン、フェノール、トルエンジイソシアナートなどの化学物質の原料として使用されています。
ガソリンのオクタン価向上剤
トルエンは、ガソリンのオクタン価を向上させる効果があるため、ガソリンに添加されることがあります。
健康への影響
トルエンを吸入すると、頭痛、めまい、吐き気などの中枢神経系への影響が現れることがあります。長期的な暴露は、肝臓や腎臓に負担をかけるリスクがあり、高濃度では呼吸器への刺激や意識障害を引き起こす可能性もあります。
まとめ
以上、TOGAフィルターが各成分に対して高い除去性能を持つが可能な有機溶剤についてご紹介させていただきました。
実際にTOGA製品を導入するにあたっては、フィルターの除去率に合わせて、フィルター自体の寿命、ランニングコストが気になることと思います。
実際に導入されている多くの研究施設では、概ね1年間でのフィルター交換を推奨させていただいていますが、ランニングコストは現場ごとの対象物質の濃度や製品の稼働時間などから試算する必要があります。
当社の製品をご検討される方はお気軽にお問合せください。
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