透析治療を担う医療現場において、薬剤の取り扱いミスは患者の安全に直結する重大なリスクです。特に、酢酸や次亜塩素酸ナトリウムといった薬剤の誤混合によって発生する塩素ガスは、スタッフや患者の健康を脅かす危険な事態を招きます。

2025年3月には、福岡県内の病院で、透析装置の消毒中に塩素系洗浄剤へ誤って酢酸が混入され、塩素ガスが発生する事故が発生。患者や職員あわせて100人以上が避難する事態となり、病院は一時的に外来診療と救急受け入れを停止するなど、大きな混乱が生じました。

さらに2025年4月、北海道千歳市の病院でも同様の事故が発生。人工透析用の配管を消毒する作業中に、次亜塩素酸と酢酸を誤って混合したことで塩素ガスが発生し、病院にいた約400人の患者・職員が一時的に影響を受ける可能性が生じました。幸いにも体調不良者は確認されませんでしたが、ガス除去のため一時的に消防や警察が出動する事態となっています。

このように、日常の作業でごく当たり前のように使われている薬剤が、取り扱い一つで「有毒ガス」となる現実は、決して特別なミスによるものではありません。どの透析室でも起こり得るリスクとして捉える必要があります。

ここでは、こうした塩素ガス発生のメカニズムや、研究施設と比較した病院での安全管理体制の違い、そして現場でできる現実的な防止策としての有害ガス浄化装置の有効性について解説します。

なぜ透析室で塩素ガスが発生するのか?

透析室では、装置の洗浄や消毒のために塩素系薬剤(次亜塩素酸ナトリウム)や酢酸などの薬品を日常的に使用しています。これらの薬剤自体は適切に使用すれば安全ですが、酸性薬剤と塩素系薬剤を混合すると有毒な塩素ガスが発生するという危険性を常に孕んでいます。

塩素ガスは、気体の状態で発生しやすく、わずかな量でも人体に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、密閉された透析室内や薬剤調合エリアでは、換気が間に合わない状況で拡散するリスクが高いのです。

事故が発生した例では、薬剤の補充作業中に容器の取り違えや、ラベルの確認漏れといったヒューマンエラーが原因となり、結果として塩素系薬剤に酸性の酢酸が混入し、塩素ガスが発生しました。これは、透析現場における日常的なオペレーションに潜むリスクであり、「特別なミス」ではなく、誰にでも起こり得るものです。

病院での“今できる現実的な対策”とは?

透析室での薬剤誤混合による塩素ガス発生リスクは、調合時のミスだけにとどまりません。薬剤の保管や管理体制の不備もまた、有害ガス発生の引き金になり得ます。

例えば、薬剤の容器にラベルが貼られていない、または剥がれていた場合、視覚的な判断での誤投入が起こりやすくなります。また、類似の容器が並んでいたり、複数の薬剤が同一の保管エリアに雑然と置かれていたりすると、違う薬剤を誤って投入するリスクが高まります。

さらに、不要となった薬剤を一時保管している容器からガスが揮発・漏出するケースもあり、これは薬剤の廃棄ルールが徹底されていない現場で起こりやすい問題です。

こうした状況においては、薬剤管理マニュアルの見直しやスタッフ教育の強化といった体制面の整備に加え、万が一に備えた装置的な対策も併せて検討すべきです。特に、突発的なガス発生に即座に対応できる有害ガス浄化装置の導入は、リスクを大幅に軽減できる現実的な一手といえます。

研究施設では徹底されている「化学物質リスク管理」

同じように薬品を扱う現場であっても、研究施設では化学物質に関する管理体制が法令によって厳しく規定されており、誤混合やガス発生といった事故リスクに対して強固な対策が講じられています。

2024年4月の法改正により、研究施設などの事業場では「化学物質管理者」の選任が義務化されました。この管理者は、取り扱う薬品のリスクを評価し、その結果に基づいて必要な安全対策や教育、設備整備を計画・実行する責任を負います。

また、研究施設では法令に基づき、次のような設備と管理体制が整備されています。

  • リスクアセスメントの定期実施
  • SDS(安全データシート)とラベル表示の徹底
  • ドラフトチャンバーや局所排気装置の常設
  • 作業記録・薬品管理の文書化と監査体制

これにより、万が一薬剤の誤混合が起きた場合でも、有害ガスが発生・拡散する前に封じ込める仕組みが整っているのです。

一方で、病院ではこうした化学物質の専門的な管理は制度上求められていないケースが多く、現場任せになっていることが少なくありません。その違いが、同じような薬品を使っていても、病院のほうが事故に直結しやすい要因となっています。

塩素ガス事故に備える有害ガス浄化装置の提案

薬剤の誤混合や保管ミスによる塩素ガス発生リスクは、いくら注意していても100%排除することは困難です。だからこそ、万が一の事態に備えた「その場でガスを吸着・除去できる装置」の存在が、現場の安全性を大きく底上げします。

たとえば、TOGAの有害ガス浄化装置は、発生した塩素ガスをフィルターで強力に吸着・浄化できる設計となっており、以下のような場面で有効に機能します。

  • 突発的なガス発生時に、局所的に素早くガスを除去
  • コンパクト設計でキャスター付きなのでどこにでも移動が可能
  • 排気ダクトが不要なため、既存の設備に干渉せず導入できる
  • 有害ガスの99%以上を除去

また、「常時稼働が必要な装置ではない」という点も、病院での導入において現実的な選択肢となる理由の一つです。必要な時だけ稼働でき、保守コストも明確なため、誤混合事故や薬剤漏洩に備える非常用設備として適しています。

このような装置を「最後の砦」として準備しておくことは、リスクマネジメントの観点からも重要です。

「医薬品」ではなく「薬剤」という視点での安全対策を

病院では、患者の安全を守るために医薬品の管理体制がしっかりと整備されています。しかし、薬剤の中には医薬品ではなく「化学物質」としての危険性を持つものも含まれているという視点は、現場で見落とされがちです。

今回ご紹介した塩素ガス事故のように、医療現場で日常的に使用されている薬剤が、取り扱い一つで「有害ガス」へと変わるというリスクは、決して例外的な話ではありません。

研究施設では、こうしたリスクに対して「化学物質管理」という明確な制度と設備によって対応しています。一方、病院においては、「医薬品」の延長として薬剤を扱っているために、化学的なリスク管理が体系的に整っていないという現状があります。

今後、医療現場でも化学的リスクに対する視点を取り入れ、設備面でも「想定外に対応できる体制」を整えることが、安全管理の質を一段引き上げる鍵となります。有害ガス浄化装置の導入は、その第一歩として非常に有効な選択肢です。

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