製紙工場では、紙の原料となるパルプを作る過程で、木材チップを薬品で処理する「クラフトパルプ製造工程」があります。この工程では、リグニンという成分を分解するために苛性ソーダや硫化ナトリウムといった薬品が使用されますが、その際に副次的に発生するのが硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系化合物です。
これらの化合物は、極めて低濃度でも人が不快と感じる強烈な臭気を持ち、工場内にとどまらず近隣にも臭気として拡散する恐れがあります。また、硫化水素は濃度によっては人体に有害な影響を与える可能性があり、作業者の健康管理や安全衛生上の観点からも、早急な対策が求められる物質です。
実際に、製紙工場周辺では住民から「卵が腐ったような臭いがする」といった苦情が寄せられるケースも多く、悪臭苦情は地域との信頼関係を損なうリスクも孕んでいます。こうした背景から、多くの製紙工場では臭気物質、特に硫化水素を中心とした対策の強化が求められています。
硫化水素の特性と臭気対策の重要性
硫化水素(H₂S)は、無色で腐った卵のような臭いを持つ気体で、日本の「特定悪臭物質」にも指定されています。その最大の特徴は、極めて低濃度でも人がはっきりと臭いを感じることです。わずか0.00047ppmという極めて低い濃度でも感知されるため、製紙工場などで少しでも漏れがあれば、近隣住民がすぐに異臭として認識します。
さらに、硫化水素は濃度が高くなると中枢神経系への影響を及ぼし、吐き気・頭痛・呼吸困難といった症状を引き起こす危険性があるため、労働安全衛生の面でも非常に重要な対象です。
製紙工場では、臭気問題が単に「においの問題」にとどまらず、法令遵守、作業者の安全確保、さらには企業の社会的責任(CSR)にも関わる重要な課題として位置づけられています。悪臭防止法の規制を満たすことはもちろん、周辺地域との信頼関係を維持し、工場の継続的な操業を確保するうえでも、硫化水素に対する具体的かつ効果的な対策が不可欠なのです。
製紙工場で採用される主な脱臭技術の比較
製紙工場では、臭気対策としてさまざまな脱臭技術が導入されています。臭気の発生源や成分、濃度、施設の規模に応じて、最適な方式を選ぶ必要があります。ここでは、代表的な4つの脱臭技術を比較します。
脱臭技術 | 特徴 | 適用範囲 | 導入コスト | メンテナンス |
---|---|---|---|---|
生物脱臭法 | 微生物が臭気成分を分解。持続性と効果が高い | 高濃度・広範囲 | 中~高 | 微生物の管理・保守が必要 |
スクラバー(洗浄法) | 薬液で臭気を中和。硫化水素など水溶性ガスに効果 | 中~高濃度 | 中 | 薬液の補充・設備洗浄が必要 |
オゾン脱臭法 | 酸化力の強いオゾンで臭気成分を分解 | 中~低濃度 | 高 | オゾン発生器の管理が必要 |
活性炭吸着法 | 臭気成分を物理的に吸着。シンプルで省スペース | 低~中濃度 | 中 | 活性炭の定期交換が必要 |
脱臭効果やコスト、維持管理の手間などはそれぞれ異なります。たとえば、スクラバーは硫化水素のような水に溶けやすいガスには有効ですが、設備が大掛かりになりやすい点がネックです。生物脱臭法は高効率ながら、設置スペースや微生物の管理が必要になります。
一方、活性炭吸着法やオゾン法などは比較的コンパクトに設置できるため、特定エリアの局所的な脱臭対策に向いています。
このように、工場全体の臭気対策と局所対応を組み合わせて考えることが、効果的な臭気対策には欠かせません。
脱臭装置選定時のポイント
製紙工場における硫化水素対策として脱臭装置を導入する際は、単に「においが気になるから設置する」というだけでなく、いくつかの明確なポイントを押さえて選定する必要があります。以下に代表的な選定基準を紹介します。
臭気の発生源と濃度の特定
まず最初に行うべきは、「どこから」「どの程度」臭気が発生しているかの把握です。
クラフトパルプ製造工程なのか、排水処理設備なのか、または一部の作業エリアなのかを明確にすることで、装置の選定も的確になります。加えて、臭気成分の種類(硫化水素、メチルメルカプタン等)と濃度を測定することで、処理能力に見合った装置を選ぶことが可能になります。
設置スペースと既存設備との整合性
脱臭装置を設置する際には、排気ダクトなどの既存インフラとの整合性を十分に確認する必要があります。
製紙工場では、法令により局所排気装置の設置が義務付けられている場合も多く、装置選定にあたってはそれらの設備に適合する構造かどうかが重要です。
また、現場によってはスペースが限られていたり、排気設備の増設が難しい場合もあるため、既存の排気系統に組み込みやすい構造や、設置場所を柔軟に選べる省スペース型装置を選ぶことが現実的な選択肢となることもあります。
初期コストとランニングコストのバランス
どんなに脱臭性能が高くても、導入コストが高すぎる、あるいは維持費がかさむようでは中長期的に現実的とは言えません。
導入費用、フィルターや薬剤の交換頻度、電力使用量などをトータルで比較し、自社の運用に合った装置を選ぶことが重要です。
メンテナンス性とサポート体制
臭気対策は「導入して終わり」ではなく、継続的な性能維持が不可欠です。
そのため、日常点検やフィルター交換がしやすい設計かどうか、メーカーによるサポート体制が整っているかも確認すべきポイントです。
TOGA社の有害ガス浄化装置の特長

製紙工場で発生する硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系臭気物質に対し、TOGA社が開発した有害ガス浄化装置は、局所的な臭気対策として高い効果を発揮します。以下に、その特長をご紹介します。
高性能フィルターによる除去技術
TOGA社の装置は、物理吸着・化学反応・中和反応の3つを組み合わせた独自のフィルター技術を採用。硫化水素やメチルメルカプタンといった臭気強度・毒性ともに高いガスを効率よく除去します。
コンパクトで柔軟な設置が可能
本装置は省スペース設計かつキャスター付きで移動も容易なため、限られた作業スペースや排気設備の補助用途として活用できます。既存のダクト排気と組み合わせて使用することで、局所的な臭気対策の精度を高めることが可能です。
ダクト工事を必要としない設計
装置自体はダクトレスで動作するため、既設設備の変更が難しい場合や、スポット的に臭気が強い場所に対して、速やかに設置・運用ができる点が特長です。もちろん、法令遵守の観点からは、既存の換気設備との適切な併用が前提となります。
維持管理のしやすさ
定期的なフィルター交換のみで運用できるため、専門的な技術がなくても扱いやすく、ランニングコストも比較的抑えられます。また、TOGA社ではフィルター材の交換サポートや適用相談も行っており、導入後のサポート体制も整っています。
製紙工場の臭気対策におけるTOGA社製品の有効性
製紙工場において硫化水素などの硫黄系臭気は、作業環境や近隣への影響が大きく、企業として早急かつ効果的な対策が求められる重要課題です。
臭気対策には多様な脱臭技術が存在しますが、局所的な発生源への対応、限られた設置スペース、コストバランス、メンテナンス性などを総合的に考慮する必要があります。
そうした現場の課題に対し、TOGA社の有害ガス浄化装置は非常に有効な選択肢となり得ます。
- 高性能なフィルターによる硫化水素やメチルメルカプタンの効率的除去
- 省スペース・移動可能な構造
- ダクトレス設計による設置の柔軟性
- 継続使用に配慮したメンテナンス設計
これらの特長は、既存の大規模排気設備と併用して導入する補完的対策としても非常に相性が良く、現場に即した実用的な脱臭ソリューションとなります。
製紙工場における臭気対策の強化をご検討中の方は、まずは一度、TOGA社の製品資料や実績をご覧いただき、現場での具体的な適用可能性を確認されることをおすすめします。
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