フィルムの長期保存において、セルロースアセテート製フィルムの劣化現象である「ビネガーシンドローム」は深刻な問題です。​この劣化は、酢酸ガスの放出を伴い、フィルム自体や周囲の資料、さらには保存施設の設備にも悪影響を及ぼします。​

本事例では、完全密閉型試薬庫TOGA-GS21を導入することで、酢酸ガスの効果的な除去と保存環境の最適化を実現したケースについてご紹介させていただきます。

フィルムの長期保存における課題|酢酸ガスがもたらすリスク

​フィルムの長期保存においては、環境要因が劣化を促進する大きな課題となっています。​特に、セルロースアセテート製のフィルムは、高温多湿の条件下で加水分解を起こし、酢酸ガスを放出します。 ​この現象は「ビネガーシンドローム」と呼ばれ、以下のような影響を及ぼします。

  1. フィルム自体の劣化
    酢酸ガスの放出により、フィルムが波打つ、ひび割れる、白い粉が出る、溶け始める、粉々に分解するなどの劣化が進行し、最終的には画像が再生不能になる可能性があります。 ​
  2. 周囲のフィルムへの影響
    ​放出された酢酸ガスが周囲のフィルムに蓄積し、他の貴重なフィルムの劣化を促進するリスクがあります。​
  3. 保存施設の設備への悪影響
    ​酢酸ガスが長期間保存環境中に留まることで、エアコンや金属製ダクトが腐食し、施設全体の維持管理に支障をきたすケースも報告されています。​

これらの課題に取り組むため、保存環境を最適化するため、完全密閉型試薬庫(TOGA-GS21)をご導入いただきました。

完全密閉型試薬庫 TOGA-GS21が選ばれた理由

​TOGAの完全密閉型試薬庫は、試薬庫内で発生する有害ガスや悪臭を効果的に除去するために設計された製品です。

​この試薬庫はダクト工事が不要な完全密閉構造のため、設置場所の制約が少なく、温度や湿度を一定に保つことが可能です。​また、国際特許を取得したTOGAフィルターを搭載しており、幅広い有害ガスを99%以上除去する高い性能を持ちます。​

そのため、フィルムから発生する酢酸ガスを24時間除去することが可能で、保存対象を酢酸の影響から保護できます。また、密閉型構造により、外部に酢酸ガスが漏れ出ることを防ぐので、周囲の環境に影響を与える心配もありません。

TOGAフィルターの特徴

TOGAフィルターは、国際特許取得済みの優れた性能により幅広い有害ガスに対応できるよう設計されています。その主な特徴は以下の通りです。

  1. 広範囲なガス除去性能
    酢酸ガスをはじめ、揮発性有機化合物(VOC)や他の有害ガスを99%以上除去します。
  2. 化学反応と吸着の組み合わせ
    物理的吸着だけでなく、化学反応によって有害ガスを中和し、分解します。この設計により、フィルターの性能が長期間維持されます。
  3. 持続可能な運用
    長寿命フィルターの設計により、定期交換の頻度を最小限に抑え、運用コストを削減します。
  4. 多様な環境に対応可能
    保存対象や施設の条件に合わせたフィルターのカスタマイズが可能で、さまざまな環境で最高の効果を発揮します。

​TOGAフィルターの長期性能評価|1年間の検知管測定結果

TOGAフィルターの性能は、多くのバックデータに裏付けられており、ほとんどの作業環境において1年以上にわたり有害ガスを効果的に除去できることが確認されています。

しかし、現場レベルでのフィルターの寿命やランニングコストは、設置している室内の温度や湿度、有害ガスの濃度などに依存することが多く、必ずしも試算通りにはならないこともあります。

そこで、今回は、実際のフィルター性能を把握するために、2024年2月の導入から1年間、3ヶ月ごとに合計4回の検知管測定を実施しました。

検知管測定では、試薬庫内に検知管を設置後、一定時間保持してから取り出し、酢酸ガスの濃度を測定します。

比較のため、まずフィルターを使用しない状態で、3台の酢酸ガス濃度がどの程度になるかを把握するために、試薬庫の運転を停止し、24時間後に庫内の酢酸ガス濃度を測定しました。

その結果、以下の初期値が記録されました。

​TOGAフィルターなしでの測定結果

測定年月試薬庫1試薬庫2試薬庫3
2024年5月上段0.5ppm
下段0.25ppm
上段1.5ppm
下段1.0ppm
上段0.5ppm
下段0.5ppm

次に、TOGAフィルターを装着した状態で4回の検知管測定を実施した結果を以下の表にまとめました。

​1年間の検知管測定結果

測定年月試薬庫1試薬庫2試薬庫3
2024年5月検出なし検出なし検出なし
2024年8月検出なし検出なし検出なし
2024年11月検出なし検出なし検出なし
2025年2月検出なし検出なし検出なし

1年間の測定期間中、酢酸ガス濃度はすべて検出限界以下を維持し、フィルターの性能が安定していることが確認されました。

また、運用期間中に目立ったフィルターの劣化は見られず、1年間安定して機能を維持できることが実証されました。

貴重な資料を守る|TOGA-GS21がもたらす保存環境の革命

フィルムの長期保存において、酢酸ガスの発生による劣化は重大な課題です。​本事例で導入された完全密閉型試薬庫TOGA-GS21は、酢酸ガスを効果的に除去し、保存環境を最適化することで、フィルムの劣化抑制に寄与しています。

​1年間の実証試験においても、酢酸ガス濃度は検出限界以下を維持し、フィルターの安定した性能が確認されました。​これにより、フィルムの長期保存が可能となり、貴重な映像資料を未来に伝えるための有効な手段であることが示されました。

研究室で発生する有毒ガス悪臭お悩みではないですか?

  • ダクト追加工事が難しい建物のため換気の問題を抱えている
  • 安全対策を強化して女性や若い人たちが安心して働ける現場をつくりたい
  • ピンポイントで有毒ガスを浄化する装置があったらな・・・
  • 研究施設としてSDGs(脱炭素対策)に貢献したい

国際特許取得TOGA®フィルターが有毒ガスの問題を根本的に解決します